新着情報(2026年1月5日):中国及びインドが2024年度APAレポートを発表

中国及びインドの各税務当局が発行する、APAの申請・締結状況をまとめたAPAレポートの2024年度(中国は2024年1~12月、インドは2024年4月~2025年3月)版が2025年12月迄に出揃いました。

APAは、関連者間取引価格及びその算定方法について、一定期間は税務調査を行わないことを税務当局が認める制度です。APAには大きく2種類あり、自国の税務当局に認めてもらうのがUnilateral APA(以下“UAPA”)で、最終的に対象取引の両国税務当局間で合意するのがBilateral APA(以下“BAPA”)です。つまり両国の課税リスクを回避できるBAPAが最も確実な移転価格リスク対策であると言えます。

ちなみに、APAの公式名称は中国ではAdvance Pricing Arrangementである一方、インドではAdvance Pricing Agreementです。Agreement(合意)型の米国やインドでは、APA申請時に企業が税務当局に高額な手数料を支払う代わりに、「合意」というより高い確実性を得る事が出来るという見方もありますが、実際には、Arrangement(確認)型であり申請時の当局向け手数料が必要ない日本や中国におけるAPAの確実性がAgreement型よりも低いという事は特にないように思われます。

以下、中印両国のAPAレポート概要を紹介します。

  • 申請・締結件数

(表:中国及びインドにおけるAPA件数推移)

年度

中国

インド

 

申請

締結

申請

締結

2020

NA

29(14)

133(33)

31(13)

2021

NA

20(11)

74(35)

62(13)

2022

NA

34(15)

193(77)

95(32)

2023

NA

36(27)

188(78)

125(39)

2024

NA

39(27)

215(90)

174(65)

(注)カッコ内は内BAPAの件数。中国の申請件数は未公表。

米国や日本ではAPA事案の殆どがBAPAになっている一方、中国やインドでは未だにUAPAの件数が全体の相当部分を占めています。その理由としては、本社所在国等の取引相手側よりも中国・インド側で課税リスクが顕著に高いケースが多いことがあげられます。その為、中印側のリスクのみを回避すべくUAPAを選択している企業も少なくないものと考えられます。特にインドでは2024年度のUAPA締結件数が109件と過去最高を更新しました。一方でインドはBAPA締結件数も65件と過去最高を更新し、APA全体として大幅に件数が増加しており、件数の伸びがきわめて少ない中国とは大きく差がつきました。

  • 処理期間(APA申請から締結までの期間)

申請後、一ヵ国の税務当局による審査、及び企業と当局の交渉を経て締結されるUAPAよりも、二ヵ国の税務当局による上記プロセスの後に両国当局間による相互協議を経て締結されるBAPAの方が処理期間は長くなります。現に中国では、2024年度に締結されたUAPA 12件の全てが処理期間2年以内でしたが、BAPAについては締結27件の内半数超の14件が処理期間2年超を要しています。

一方インドは、2024年度に締結したBAPA 65件の平均処理期間は4年2ヵ月と、前2023年度の平均5年6ヵ月に比べて1年以上の短縮となりました。またUAPAの平均処理期間も3年7カ月と前年度の4年7カ月から1年短縮されましたが、UAPAとしては(前述の通り全件2年以内で収めている中国と比べても)未だ長期間を要しています。但し中国の処理期間が全体的に短いのは、正式申請前に予備会談、申請意向書の提出が必要であり、当局によって絞り込まれた事案のみが申請されるという事情もあります。

  • BAPAの取引相手国(全年累計ベース)

中国のBAPAにおける取引相手地域は、アジアが全締結件数の69%を占め、次いで欧州(19%)、北米(11%)となっています(国別の内訳は非公表)。一方インドのBAPA取引相手国は米国が全締結件数の54%と圧倒的に多く、以下離れて英国、日本(共に12.5%)、シンガポール(5.5%)の順となります。

  • 対象業種

APAを締結している企業の業種に関して、中国では製造業が75%と大半を占め、次いで販売業(卸売及び小売)の14%となっています(全APA累計ベース)。対照的にインドではIT又はコンサルティング等のサービス業による利用が主流であり、2024年度においてもUAPA締結件数の40%がIT業、BAPA締結件数の78%がIT含むサービス業で占められています。取引相手国と併せて考えると、中国では日本、韓国等アジア企業の製造子会社が、インドでは米国IT企業の技術開発、コールセンター等サービス拠点が主にAPAを締結していると推測されます。