株式会社コスモス国際マネジメント



新着情報(2016年7月31日)


中国が移転価格ガイドラインを一部改正・最終化

中国国家税務総局は2016 年6月29 日付で、国家税務総局公告2016年第42号「関連申告および同時文書管理の改善に関する公告」(以下“第42号公告”)を発表しました。本公告の主な目的は、OECD及び中国を含むG20諸国が共同でまとめた対BEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源侵食及び所得の移転の意味)行動計画を受け、特に行動13「移転価格文書及び国別報告書」の最終レポート(以下“BEPS最終レポート”)の内容を同国の移転価格ガイドラインに反映させるためのものです。但し実際にはそれのみならず、最近の税務調査でもみられる中国独自の主張を織り込んだ改正がこの機会に行われました。

昨年(2015年)9月17日付で、従前の移転価格ガイドラインである「特別納税調整実施弁法(試行)」を全面的に改正する草案が公表されましたが、今回はその内一部が最終改正されました。具体的には、特別納税調整実施弁法(試行)の第2章、第3 章、及び第74 条より第89 条までが改正され、2016 年以降の事業年度より適用されます。

以下、従前のガイドラインからの主要な変更点を中心に、及び昨年の改正草案からの主な変更点も含めて、本第42号公告の概要を紹介します:

関連者間取引の定義

従前の規定から大きな変化はないものの、持分関係(25%)以外の貸出、親族等による実質支配基準の規定が具体化されました。また資本取引である株式投資取引についても関連者間取引と定義されました。

国別報告書の提出(新設)

多国籍グループ企業の最終持株会社である中国居住者企業で前年度収入が55億元(900億円弱)を超える場合、国別報告書を提出しなければなりません。但し、情報提出が国家の安全に触れる等の場合、国別報告書の提出は免除されます。

日系企業については、基本的には連結売上高1,000億円以上の企業の本社が日本の国税当局に提出し、日中租税条約の情報交換制度により中国の税務当局に送られることになりますので、中国に直接国別報告書を提出することは通常ないと考えられます。

同時文書

第42号公告が定義する同時文書は、マスターファイル、ローカルファイル、および特殊事項ファイルから構成されます。OECDのBEPS最終レポートでは、移転価格同時文書を国別報告書(Country-by-Country Report)、マスターファイル、ローカルファイルの3層構造としているのに対し、中国規則では国別報告書を別建てとし、BEPS最終レポートに無い特殊事項ファイルが同時文書を構成しているのが特徴です。

また改正草案では、限定された機能・リスクのみ有するにもかかわらず損失を計上している企業は、関連者間取引金額の免除基準(売買取引で2億元以下、その他取引計4,000万元以下)に関係なくマスターファイル及びローカルファイルの作成義務がありましたが、最終的に第42号公告では当該条項が削除されました。但し、国税函[2009]363号は未だ廃止になっていないことから、限定された機能・リスクのみ有するにもかかわらず損失を計上した企業は、少なくとも今までの同期資料に該当するローカルファイルに関しては同時文書作成義務を引続き負っていると考えられます。

マスターファイル(新設)

BEPS最終レポートに基づいて新設されたマスターファイル(主体文档)は、多国籍企業のグループ全体に関する組織、事業内容、無形資産の分布、財務・税務状況などを記載するものです。

以下の条件のいずれかを満たす場合、マスターファイルを準備しなければなりません:

(一)年度内に国外関連取引が発生し、且つ当該中国企業を有する多国籍グループ企業がすでにマスターファイルを他国で準備している場合。

(二)年度関連者間取引総額が10億元(約160億円)を超える場合:改正草案では従前の同期資料と同じ有形資産売買取引額が年2億元(約32億円)超、その他取引で年4,000万元(約6.4億円)超の関連者間取引があればマスターファイルも作成が必要となっていましたが、最終的には10億元超に緩和されました。但し、日本では先日改正された移転価格税制により、売上高1,000億円以上の企業のみマスターファイルを作成する必要がありますが、中国関連会社との取引額が10億元を超える場合は、日本では作成不要な売上1,000億円未満の企業でも中国ではマスターファイルを作成する必要がありますので、注意が必要です。

尚マスターファイルは、企業グループ最終持株会社の事業年度終了後12ヶ月以内に準備しなければなりません。

ローカルファイル

今までの同期資料に該当するローカルファイル(本地文档)の作成義務を負う企業の年間関連者間取引額基準については、従前の有形資産売買取引額が年2億元超、その他取引で年4,000万元超に、以下2つの基準が新たに加わりました。

・ 金融資産の譲渡金額が1億元超。

・ 無形資産所有権の譲渡金額が1億元超。

以上4つのいずれかの基準に該当する取引規模の企業は、決算期翌年の毎年6月30日までに作成する必要があり、税務当局が請求してから30日に提出しなければなりません。但しこれは、従前の規定における5月末日までの作成義務、及び税務当局の請求後20日以内の提出義務よりも各々若干緩和されました。理由としてはおそらく、ローカルファイルの要記載事項が従前の同期資料に比べかなり増加していることを受けての措置と考えられます。


今回、従前の同期資料に比べて新たにローカルファイルで記載が必要とされた項目のうち、主なものは以下の通りです:

・ 地域特殊要因:取引価格に影響を及ぼす要因として、コスト節減、市場プレミアム等の地域特殊要因を分析・記載する必要が生じました。具体的には、労働力コスト、環境コスト、市場規模、市場競争度、消費者購買力、商品またはサービスの代替性、政府の規制等の方面より分析しなければならないと明記されました。

                        

(コメント)これは最近の中国における移転価格税務調査で税務当局の主張に則した改正です。つまり、比較的低い人件費、比較的高い経済成長率と巨大な人口がもたらす強い購買力など、地域特殊要因は専ら中国法人の課税所得を上げるものであることを正当化したいというのが税務当局の狙いと思われます。しかしながら、本来はユニークな技術ノウハウ等、いわゆる「特殊な無形資産」が残余利益を生み出す最大の源泉であり、中国が掲げるこれら地域特殊要因は通常の利益しか生まないというのが、どちらかというと世界共通の認識です。自国で生み出された特殊な無形資産が少ない中国がより多くの課税所得を主張する為の苦肉の主張と言えます。しかし、現実には最近の中国における賃金高騰と経済の減速により、それらの地域特殊要因でさえ実態としては本当に中国法人の課税所得を押し上げる要因となっていない企業も多いのではないかと思われます。以上を勘案の上、地域特殊要因を記載の際は、あくまでも実態に則した分析及び記述が必要です。

・ バリューチェーン分析:バリューチェーンとは、原材料の調達から製品・サービスが顧客に届くまでの企業活動を、一連の価値(Value)の連鎖(Chain)としてとらえる考え方です。本公告では、関連者間取引に関する業務の流れ、物流およびキャッシュフローを研究開発、製造、販売などのバリュー毎に分析した上、企業グループが生み出す価値の各バリューへの配分方法及び配分結果を算定する必要があるとしています。また、その算定に当たっては上述の地域特殊要因も考慮する必要があるとしています。

・ 関連者間サービス取引:以下の通り本公告では、サービス取引に関する詳細な記載が新たに要求されています:

1. 関連者間サービスの概要(サービスの提供者と受益者、サービスの具体的内容、特性、価格設定方法、支払方法、サービス発生後の実際の受益状況など)

2. サービス費用算定方法(項目、金額、配分基準、算定過程およびその結果等)

3. 関連者向けサービスと類似の非関連者向けサービス取引が存在する場合の、関連者向けサービスと非関連者向けサービスに係る価格設定や取引結果上の差異の説明。

特殊事項ファイル

改正草案では、特殊事項ファイルは関連者間サービス取引特殊事項ファイル、コストシェアリング契約特殊事項ファイル、及び過少資本特殊事項ファイルの3つを含むとされていました。つまり、本社からの技術者派遣など多くの企業が行っているサービス取引についても、経済的なメリットを提供するものであれば特殊事項ファイルを作成する必要が生じると考えられました。それに対し本公告では最終的に特殊事項ファイルから関連者間サービス取引が除外され、コストシェアリング契約特殊事項ファイルおよび過少資本特殊契約事項ファイルのみとなりました。その代り、上述の通りローカルファイルにおいて、関連者間サービスに関する詳細な記述が要求されるようになりました。

その他

同時文書はマスターファイルも含め中国語で作成する必要があります(ちなみに日本では、マスターファイルは英語での作成・提出も認められています)。

また、中国国内の関連者のみと関連者間取引が発生した場合、マスターファイル、ローカルファイルおよび特殊事項ファイルの作成が免除されることになりました。従前の規定では、外資の出資比率が50%未満で且つ国内関連者のみと関連者取引が発生した場合のみ同期資料作成が免除されましたが、外資の出資比率基準が無くなった分緩和されました。

本件についてご不明な点がありましたら、弊社までご遠慮なくご連絡ください。また、弊社では本第42号公告の日本語訳版を作成しましたので、ご希望の方はご連絡ください。

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