株式会社コスモス国際マネジメント



新着情報(2015年12月24日)


平成28年度税制改正大綱(国際課税)−日本にも同時文書化規定が導入

消費税増税に伴う一部品目への軽減税率制度導入の問題の為、やや遅れて2015年(平成27年)12月16日付で正式発表となった平成28年度税制改正大綱ですが、国際課税の分野でも重要な改正がありました。予想通り、遂に日本の移転価格税制に同時文書化規定が加わることになりました。

同時文書化規定とは、関連会社間取引が独立企業間原則に基づき公正な価格で行われていることを示す文書を、法人税の申告期限までに作成することを義務付ける規定です。米国、中国など主要国の多くが既に同時文書化規定を有している中、日本は同規定がありませんでした。しかしながら、既に本稿でも紹介したBEPS(Base Erosion and Profit Shifting)プロジェクトによりOECD移転価格ガイドライン(以下“OECDガイドライン”)でも同時文書化規定が推奨された事を受けて、同ガイドラインにかなり緊密に準拠している日本の移転価格税制でも今般同時文書化規定が制定される事となりました。具体的には以下の通り、(1)国別報告事項、(2)事業概況報告事項(マスターファイル)、及び(3)独立企業間価格を算定する為に必要と認められる書類(ローカルファイル)の3本立てとなっており、OECDガイドラインに則した内容となっています。


大綱における文書化規定の概要

(1)国別報告事項

多国籍企業グループの最終親事業体である内国法人等は、当該多国籍企業グループが事業を行う国ごとの収入金額、税引前当期利益の額、納付税額その他必要な事項(以下“国別報告事項”)を、最終親事業体の会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までに、e-Tax により税務署長に提供しなければならない。

(a) 多国籍企業グループの範囲:連結財務諸表を作成すべき企業集団(=有価証券報告書を提出する上場・公開企業及び大会社)で、税務上の居住地が異なる2以上の事業体を含むもの(但し連結親会社が他の連結財務諸表における連結子会社となる企業集団を除く)。

(b) 構成事業体の範囲:

@適用される会計基準において、連結財務諸表に財産及び損益の状況が連結して記載される事業体

A規模の重要性を理由として連結の範囲から除外される事業体

(c) 国別報告事項の項目:BEPSプロジェクトの勧告で示されたOECDガイドライン第5章改定案の別添3に示された記載項目と同様。

(d) 提供義務者:多国籍企業の最終親事業体(構成事業体のうち他の構成事業体を支配するもの)又は最終親事業体が指定した代理親事業体である内国法人

@多国籍企業の最終親事業体が国外にあり、その居住地国を通じて国別報告事項の提供を受けることができないと認められる場合、その多国籍企業の構成事業体である内国法人又は恒久的施設を有する外国法人が提供義務者となる。

(e) 免除規定:直前会計年度の連結総収入金額が1,000億円未満の多国籍企業グループについては国別報告事項の提供義務を免除する。

(f) 使用言語:英語

(g) 期限内に提出しない場合の罰則を設ける。

(h) 適用開始時期:平成28年4月1日以後に開始する最終親事業体の会計年度に係る報告事項より

(2)マスターファイル

多国籍企業グループの構成事業体である内国法人等は、当該多国籍企業グループの組織構造、事業の概要、財務状況その他必要な項目(事業概況報告事項)を、最終親事業体の会計年度終了の日の翌日から1年を経過する日までに、e-Taxにより税務署長に提供しなければならない。

(a) 多国籍企業グループの範囲:国別報告事項に同じ

(b) 構成事業体の範囲:国別報告事項に同じ

(c) 事業概況報告事項の項目:OECDガイドライン第5章改定案の別添1に示された記載項目と同様。

(d) 提供義務者:多国籍企業の構成事業体である内国法人又は恒久的施設を有する外国法人

(e) 免除規定:国別報告事項に同じ

(f) 使用言語:日本語または英語

(g) 期限内に提出しない場合の罰則を設ける。

(h) 適用開始時期:国別報告事項と同じ

(3)ローカルファイル

国外関連取引を行った法人は、当該取引に係る独立企業間価格算定のために必要と認められる書類(電磁的記録を含む、以下“ローカルファイル”)を法人税確定申告書の提出期限までに作成しなければならず、且つ同期限翌日から7年間(国内事務所に)保存しなければならないという作成・保存義務(以下“同時文書化義務”)を負う。

(a) ローカルファイルの項目:租税特別措置法施行規則第22条の10第1項各号に掲げる書類について記載項目の明確化等の所要の整備を行うとともに、移転価格ガイドライン改定案の別添2に示された記載項目を当該各号に掲げる書類に追加することとする。

(b) 免除規定:一つの国外関連者との前期の取引金額(受払合計)が50億円未満且つ無形資産取引額(受払合計)が3億円未満である場合には、当該関連者との当期の国外関連取引については同時文書化義務を免除する。

(c) 推定課税規定:以下に掲げる場合、国税当局は推定課税・同業者調査を行うことができる:

@同時文書化義務のある国外関連取引:国税当局の職員の提出要請に対し、ローカルファイルの提出が45日以内(で当該職員が指定する日まで)に、ローカルファイル作成に関連する諸資料の提出が60日以内(で当該職員が指定する日まで)になかった場合

A同時文書化義務のない国外関連取引:国税当局の職員の提出要請に対し、ローカルファイルに相当する資料等の提出が60日以内(で当該職員が指定する日まで)になかった場合

(a) 外国法人の内部取引に係る課税の特例、内国法人の国外所得金額の計算の特例、連結法人の連結国外所得金額の計算の特例、非居住者の内部取引に係る課税の特例及び居住者の国外所得金額の計算の特例について、上記と同様に内部取引に係る独立企業間価格を算定するための文書化制度の整備を行う。

(b) 適用開始時期:平成29年4月1日以後に開始する事業年度分の法人税及び平成30年分以後の所得税について適用する。

ポイント

(a) 国別報告事項及びマスターファイルについては税務当局への提供義務という厳しいものですが、対象となる会計年度終了後1年以内と時間的には余裕があります。また連結財務諸表の作成が必要な上場企業及び大会社のみが対象で、且つ連結売上1,000億円未満の企業は免除されます。

(b) 従前からのいわゆる“移転価格文書”に相当するローカルファイルの同時文書化義務の適用は、企業の負担を考慮し1年遅れの平成29年度分からとなります。また上記の通り国外関連取引額が受払計50億円未満で且つ無形資産取引が受払計3億円未満の場合は免除されますので、多くの中小規模の国外関連取引は免除対象となるものと思われます。しかしながら免除取引についても、ローカルファイルに相当する資料等を60日以内に提出しなければ、国税当局が推定課税等を行う事が出来ると規定されました。“相当する資料等”の範囲は現状不明確ですが、場合によっては実質的にローカルファイル作成と同等の作業負担が発生し、免除取引にもかかわらず企業の負担は重くなることが予想されます。ローカルファイルを60日以内に新規に作成することは極めて難しいため、推定課税等を避けるためには税務調査に入られる前にローカルファイルと同等の資料を作成しておく必要があるからです。よって最終規則を確認する必要はあるものの、移転価格課税リスクの比較的高いと思われる企業は、免除規定に該当するか否かを問わず基本的には同時文書化に相当する準備を行っておく必要があると考えられます。

本大綱文書化規定に関する詳細、実務的な留意点等については後日弊社ライブラリにて紹介の予定です。

その他、平成28年度税制改正大綱の「国際課税」における主な改正点

(1)台湾との間で2015年11月26日に署名された日台民間租税取決めに規定された内容の実施に係る国内法の整備

(2)外国子会社合算税制等の見直し: 英国ロイズ市場において保険業を行う特定外国子会社等に係る適用除外要件の緩和

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