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新着情報(2015年07月01日)


WCOが関税評価と移転価格に関するガイドを発表

世界税関機構(World Customs Organization、以下“WCO”)は、各国の関税制度の調和・簡易化と関税行政の国際協力を推進する国際機関で、本部はベルギーのブリュッセルに置かれており、2015年4月現在180ヵ国・地域が加盟しています。このWCOが2015年6月24日、「関税評価と移転価格に関するガイド(WCO Guide to Customs Valuation and Transfer Pricing)」を発表しました。添付資料を含め101ページから成る本ガイドは、近年の国際貿易における重要な問題の一つである関税評価と移転価格の関係について示唆に富む提言を提供しています。

背景

大企業のみならず中小企業の多くが国外に進出し独自のグローバル・ネットワークを形成している現在、国際貿易の7割以上を関連者間取引が占めると推定されています。関連者間取引では、本社が最大限に資金を回収する、又は低税率国に所得を集め節税をはかる等の理由から本社が恣意的に価格を決定する可能性が高いと考えられます。よって関税でも関連者間取引価格を調査する際には、類似貨物の第三者間取引価格、製造原価、再販売価格等をベースとした移転価格税制に類似した算定方法を用い、関連者間の恣意に影響されない公正な価格評価を試みます。問題は、税関は法人税を調査する税務当局とは別の組織であり調査も各々独自に行われる中、同じ国において税務当局と税関当局の利害が相反する事です。すなわち、税務当局は移転価格税制に基づき輸入価格引下げにより法人税収の増加をはかる一方、税関当局は輸入価格引上げにより関税増加をはかります。その結果、最悪の場合同じ国で一つの取引に関して法人税、関税の両方が更正される事もありえます。

本ガイドの概要

そのような中、関税の側から移転価格税制との調和をはかる目的で作成された本ガイドは、主に2つの目的を有しています。一つは、移転価格税制及び移転価格文書について税関当局が理解を深めた上、関税評価を行う際に同じ関連者間取引を対象とする移転価格文書から多くの関連情報を収集することにより、関税評価の正確性を高める事です。もう一つは、同じ関連者間取引に対し税関当局が税務当局と協力的に執行に当たることにより、移転価格税制との利害相反による企業の損失を防ぎ、関税執行をよりスムーズに行う事です。主な具体的ポイントは以下の通りです:

  • 関税調査の際、税関当局が移転価格文書を参考にする事を推奨しています。例えば、当該関連者間輸入取引が通常の商業的慣行に従って行われているかの検証や、製品の特性・市場規模など対象製品の詳細に関する情報が移転価格文書には多く含まれていると指摘しています。
  • 各国税関当局間で、減額更正(還付)の有無や更正の方法(価格の更正が必ず必要か、税額更正も可能か)など統一されていない部分が多いので、それらは極力統一されることが望ましいとしています。
  • 移転価格税制における事前確認制度(APA)のように、税関当局が関税評価方法について事前ルーリングで(取引発生前に)特定の評価方法を認め、税関手続きの円滑化と貿易促進に寄与することを推奨しています。

  • 当局及び企業における良い慣行“good practice”を列挙しています。

  • (企業におけるgood practiceの例)

    • 関税と税務の専門家(外部、社内を問わず)同士で、当局の意向に関して連絡を取り合う。
    • 移転価格文書作成、及びAPA申請の際には税関当局のニーズも考慮する。
    • 輸入取引の実行後に移転価格更正が生じた場合、(関税制度次第では)税関当局にすみやかに連絡する。
    • (制度があれば)税関当局への事前ルーリング申請を検討する。
    • 該当輸入品に係る移転価格分析及びデータを税関当局に提供及び説明する。

    二国間FTAやTPPなど多国間協定により関税撤廃を目指す動きは進んでいるものの、全ての関税がすぐに無くなるとも思えません。特に中国、タイなどの新興国をはじめ税関当局のアグレッシブな更正は引続き行われている事を考えると、本ガイドは強制力こそないものの、海外関連会社と貿易を行う企業にとって一読の必要があると思われます。

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