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2017年11月:米国企業のタックスヘイブン利用の実態

2017年10月17日付で、米国で興味深いレポートが発表されました。タイトルは「Offshore Shell Games−The use of offshore tax havens by Fortune 500 companies」(訳:オフショアでの欺瞞行為−フォーチュン500(米国の売上高上位500社)企業のオフショア・タックスヘイブン利用の実態)で、リベラル系の非営利法人であるU.S. Public Interest Research Group Education Fund(米国公益研究グループ教育基金)とInstitute on Taxation and Economic Policy(税制・経済政策研究所)の共作となっています。内容は、米国の大企業がタックスヘイブン(租税回避地、以下“TH”と略)と呼ばれる無税国・軽課税国を利用し巨額の租税回避を行っていることを各種データにより示すと共に、共和党トランプ政権が計画する海外留保収益の国内回帰策を批判しています。以下、レポートの概要を紹介します:

1.多くの大企業がTHを利用

フォーチュン500企業の4分の3近くに当たる366社が計9,755社のTH子会社を有していることを公表している。TH子会社数が多いのは証券会社ゴールドマン・サックスの905社、モルガン・スタンレー619社に、分析機器・試薬メーカーThermo Fisher Scientificの199社が続く。

但し最近はバミューダ、ケイマン諸島などカリブ海域TH国からの脱出傾向が見られる。例えば2016年においてフォーチュン500企業が最低1社の子会社を置いている割合が最も高いTH国はオランダ(50%超)で、次いでシンガポール、香港(共に40%超)の順であった。

2.TH留保利益/節税額の増加

2016年までにフォーチュン500企業の内293社がTH子会社に利益を留保している事を公表している。その合計留保額は計2.6兆ドル(約300兆円)に及び、2010年と比べてほぼ倍増、またその68%(1.76兆ドル)が上位30社に集中している。上位3社は順にアップル(2,460億ドル)、ファイザー(1,989億ドル)及びマイクロソフト(1,420億ドル)で、この3社だけで合計留保金額の22%を占めている。

TH子会社に利益を留保している事を公表した293社の内、海外拠点の実効税率を発表している企業は僅か58社である。それら58社の海外拠点における実効法人税率は平均6.1%と米国連邦税率35%を大幅に下回っており、米国内に拠点を置く場合に比べ約2,400億ドル(約27兆円)を節税していると推測される。例えばアップルは、TH拠点にある2,460億ドルの利益に対し3.8%しか税金を払っておらず、767億ドル(約8.7兆円)を節税していると推測される。

3.実態の隠匿

米国証券取引委員会(SEC)の開示基準では、上場企業は重要な子会社のみ開示すればよい事となっているため、多くのTH拠点が開示されていないと考えられる。例えば世界最大のスーパーマーケットであるウォルマートはTH子会社数をゼロと開示しているにもかかわらず、2014年時点で75のTH子会社を有していたとの調査結果がある。またGoogle(現在の持株会社名はAlphabet)は、公表ベースのTH子会社数が2009年の25社から2016年には僅か1社(アイルランド)に激減した。しかし実際には、それら表示されなくなったTH子会社は全て未だ運営されているとの調査結果が出ており、またオランダ、アイルランド、バミューダを使った節税戦略でGoogleは毎年約20億ドル(約2,200億円)を節税していると言われている。

4.租税回避防止策

  • 現在トランプ政権の税制改革案で検討されている、全世界所得課税方式から国外所得免除方式への変更を行わない。
  • 現状ではTHを含む海外子会社における留保利益は配当しない限り米国では課税されないが、それら留保利益に35%でみなし本国送金課税する(トランプ政権税制改革案における同10%では大幅な税収漏れが発生する)。
  • 上場企業の開示制度強化により、重要な子会社のみならず全海外子会社の数を国別に表示させ、また海外子会社の実効税率の開示も強制化する。
  • 米国外への本社移転防止措置をとる。
  • Check-the-boxルールの改正により、関連会社間の資金移動に対し漏れなく課税する。
    • 所 見

      本レポートは、“欺瞞行為”など表現こそ過激ですが、調査結果は全て上場企業がSECに提出する開示報告書に基づいており、米国大企業によるTHを使った巨額の節税について正確に分析していると思われます。また租税回避防止策の提案内容自体も正論と思われます。しかし本レポートには、苛烈な取り立てを行うことによる企業の事業意欲減少の視点が欠けています。また実際には、これらフォーチュン500企業による現在の海外課税の緩さを残そうとする強大なロビー活動は侮れず、ましてや共和党のトランプ政権下で、リベラル色の強い両団体の提案が実現する可能性は極めて低いでしょう。

      (執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

      (JAS月報2017年11月号掲載記事より転載)

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