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2017年10月:日本のローカルファイル作成にあたっての留意事項

本月報の昨年(2016年)7月号では、日本の移転価格税制改正により導入された同時文書化制度及びローカルファイル(以下“LF”)の概要及び主な留意点について紹介しました。LFの同時文書化は、3月期決算企業は今期(2018年3月期)が対象初年度となり、作成期限は法人税申告期限(通常2018年5月末か6月末)である事から、特に新規に作成する場合に要する時間を考慮し、現時点で既に準備を始めている企業も多いと思われます。

既に国税庁より「LF作成に当たっての例示集」(2016年6月)及び「LFの作成サンプル」(2017年6月)が出ており、特に後者は、これに従って作成すれば経験の少ない企業でもある程度LFを作成できそうなほど詳細な内容となっています。一方、これも国税庁発行の「移転価格税制に係る文書化制度(FAQ=想定問答集の意)」(2016年10月)では、LFを含め新文書化制度に関する留意点について、税制には明記されていない部分を中心に説明が行われています。今回はその中から、LF作成にあたって重要と思われるFAQについて、筆者の解説を加え簡単に紹介します。

問71:同時文書化義務のある取引とない取引では提出する書類が異なるか。

【答】:提示又は提出が求められる書類の範囲は同じ。確定申告書の提出期限までに作成・保存する義務があるかどうかが異なる。

【解説】:改正移転価格税制では、同時文書化義務のある取引(以下“対象取引”)についてはLFを、同時文書化免除取引(以下“免除取引”)については「LFに相当する書類」を、各々税務当局の要請後一定期間内に提出すべきと定めています。しかし税制では「LFに相当する書類」の定義について定めがないところ、このFAQにより、内容的には全く同じであり免除取引でも負担軽減がない事が明らかになりました。従って、免除取引でも税務調査されたら更正リスクが高いと思われる場合、対象取引同様LFをしっかり作成しなければなりません。

問74:外国にある親会社から企業グループ内役務提供を受けている場合、それに対する対価支払は無形資産取引の対価に含まれるか。

【答】:取引科目の名称いかんに関わらず、無形固定資産その他の無形資産の譲渡、貸付け、権利の設定、使用許諾又はこれらに類似する取引は、同時文書化義務の免除基準における無形資産取引に含まれる。

【解説】:LFの同時文書化免除基準は、一つの国外関連者との前事業年度の取引額が50億円未満で、且つ無形資産取引金額が3億円未満(共に受払合計)です。つまり、無形資産取引に該当すると免除基準額が低くなり、免除にならないケースが増えると思われるため、企業としてはロイヤルティ支払等の明らかな無形資産取引を除けば、無形資産取引とみられたくないのが本音ではないでしょうか。しかし本FAQでは、あくまでも取引実態をみるとしており、例えば形式的にはサービス取引でも実際には技術支援サービス等において無形資産の供与が行われていると認定されれば無形資産取引とみなされるリスクがあると考えられます。

問81:国外関連者が作成したLFを集約して、当社のLFとすることはできるか。

【答】:国外関連者が作成したLFに相当する書類は、日本の移転価格税制に定める事項が記載されている場合には、それらLFに相当する書類を集約して貴社のLFとして差し支えない。但し利用可能な最新の情報に基づいて作成されたものに限る。

【解説】:つまり、日本の移転価格税制で定める内容が含まれており、且つ利用可能な最新年度に更新されていれば、現地作成の文書でも日本のLFとすることができます。この点からも、現地の移転価格文書は(余程リスクが少ない場合を除き)毎年更新しておくべきでしょう。

問83:当社は国外関連者が1社しかないため、マスターファイル(以下“MF”)とLFの情報が重複するが、その場合LFの記載を省略しても構わないか。

【答】:MFとLFの情報が重複する場合、確定申告書の提出期限までにMFにその情報を記載し、これを保存するのであれば、LFの記載を省略しても差し支えない。

【解説】:このFAQは国外関連者が1社しかない場合ですが、OECDのBEPS行動13最終報告書の主旨からも、例え複数の国外関連者を有する場合でも、情報が重複する場合はMFへの記載及び保存によりLFへの記載は省略してよい(その代りLFにMFへの参照リンクを表示する)と考えられます。このようなMFの効能を活かし、世界全体でのLF作成にかかる手間と費用を削減する事が可能です。但し、通常決算期末後1年以内に作成・提出すればよいMFを、LFと同期の決算期末後2〜3か月以内に作成しておく為の負担は大きく、実際にはそれほど簡単ではないと思われます。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2017年10月号掲載記事より転載)

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