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2017年9月:香港・台湾の移転価格・新文書化草案

経済協力開発機構(OECD)が主導しG20諸国の賛同も得てまとめた税源侵食・利益移転(Base Erosion and Profit Shifting、以下“BEPS”)対策プロジェクトの最終報告書(2015年10月)の内、三層文書化を提言した行動13報告書に基づき、主要国では続々と自国の移転価格文書化規則を改正しています。具体的には、各国とも(a)国別報告書(企業における損益、資産等の世界的配分状況を開示する報告書、英語名はCountry-by-Country Report、以下“CbCR”)と(b)マスターファイル(企業の世界全体の事業概要を報告する文書、以下“MF”)、及び(c)ローカルファイル(特定の関連者間取引が独立企業間価格で行われている事を示す文書、以下“LF”)の作成又は提出を一定規模以上の多国籍企業に要求しています。

アジアでは日本、中国、韓国の他、東南アジアでもシンガポール、インドネシア、ベトナム及びマレーシアで文書化規則の改正が行われています。今回は、共に中華圏に属する香港と台湾において発表されている、三層文書化を含む移転価格改正草案の概要を紹介します。

1.香港

2016年10月26日、香港政府はBEPS対策公開草案(以下“公開草案”)を発表しました。その第4章「移転価格文書化及びCbCR」において、三層文書化制度が新たに定められましたが、その後寄せられたパブリックコメントを経て、今年7月31日に免除要件を緩和した改正草案が発表されました。

(1)MF及びLF

関連者間取引を有する企業はMF及びLFを中国語又は英語で作成する必要があります。但し以下の場合は作成義務が免除されます。

A.事業規模基準:以下の3要件の内2つ以上に該当する場合、MF及びLFの作成が免除:

1.売上高がHK$2億(約28億円)以下

2.総資産がHK$2億(約28億円)以下

3.従業員数が100人以下

B.取引額基準:以下に該当する小規模取引はLF作成が免除。また全ての基準においてLF作成を免除される企業はMF作成義務も免除:

1.有形資産売買額:HK$2.2億(約30億円)未満

2.金融資産取引額:HK$1.1億(約15億円)未満

3.無形資産取引額:HK$1.1億(約15億円)未満

4.その他取引額: HK$44百万(約6億円)未満

上記免除基準の内、A.の1、2については、昨年10月の当初改正草案ではHK$1億(約14億円)でしたが、中国に比べても基準が低すぎ、多くの中小企業が対象になってしまうとの批判的コメントが相次いだのを受けて、7月の改正草案では基準が緩和されました。またB.の取引額基準は当初改正草案にはなかったものですが、少額の関連者間取引のみ有する企業の負担軽減の為、改正草案にて追加されました。

MF、LF両ファイルに記載すべき内容については、行動13報告書又は中国の規定に準じて最終化時に規定される予定です。また、作成期限についても現状明記されておらず、税務申告期限までに作成すべきという同時文書化規則が今後定められるか否か注目されます。

(2)CbCR

CbCRについては行動13報告書の提言に全関係国が準拠しており、香港でも、香港に本社を置く連結売上高EUR7.5億(又はHK$68億)以上の企業(推定約150社)が、香港税務当局であるIRDに決算期末後1年以内に提出(英語)、そこから関係各国に租税条約を通じて自動送付されます。但し香港では2018年度を適用初年度と予定している中、多くの国は行動13報告書の提言に従い2016年度からCbCR提出義務を課している為、それら他国の要求に対応する為、早期の自主的提出制度も整備される予定です。

2.台湾

台湾財務省は今年7月24日、移転価格税制である移転価格調査準則の改正草案を発表しました。年内には改正規則を最終化し、来年5月の申告時から適用の予定です。

改正の目玉はやはり三層文書化です。台湾は現在でも同時文書化制度があり、つまり三層文書化の中でLFについては既に申告時までの作成義務があります(但し総収入がNTD3億?約10億円?未満又は関連者間取引額がNTD2億未満の場合は軽減措置有)。今回はそれに加えて、一定以上の規模の企業に対しMFの申告時作成義務及び決算終了後1年以内の提出義務を課すとしていますが、“一定規模”の基準は現時点では明らかではありません。

一方CbCRについては、台湾に本社を置く一定規模以上の多国籍企業に対し決算終了後1年以内に提出義務を課すとしています。こちらの“一定規模”の基準も未だ決まっていないものの、CbCRの世界共通基準である連結売上高EUR7.5億相当となる見込みです。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2017年9月号掲載記事より転載)

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