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2017年6月:米国IRSが2016年度APAレポートを発表

米国内国歳入庁(Internal Revenue Service、以下“IRS”)は2017年3月27日付で、2016年度のAdvance Pricing Agreement(以下“APA”)に関するレポートを発表しました。

APAは移転価格算定方法について納税者と税務当局(一国又は二国間以上)との間で予め合意又は確認し、一定期間は税務調査が行われないという、移転価格税務リスクを回避する為の最も確実な手段です。米国では1991年から行われていますが、IRSによるAPAの年次報告書は2000年以降毎年発表されており、今年で18回目の報告書となります。ちなみに、APAが世界で初めて制度化されたのは日本ですが、日本の国税庁もIRSにならって2003年以降毎年APAレポートを発表しています。2016年度米国APAレポートの概要は以下の通りです:

1.申請件数

2016年度のAPA申請件数は98件と、2015年度の183件からほぼ半分に急減しました。但し2015年は、IRSへのAPA申請料が2016年より値上げされた(新規申請の場合$50,000→$60,000へ)ことから、値上げ前の駆け込み申請が殺到したことによる一時的な急増であり、その前の2014年度は108件であったことを考えると、申請件数の減少はむしろ小幅にとどまったともいえます。

98件のうち84件(86%)が二国間(多国間を含む)APAで占められています。二国間APA申請件数の相手国で最も多いのはインド(34%)、次が日本(31%)となっており、米国で申請された二国間APAの3分の2近くをこの両国向けが占めています。注目すべきは、2013年度から相手国のデータを公表して以来、日本が初めて首位を譲り、インドが突然首位に躍り出たことです。日米案件は、日系企業とその米国子会社との間の取引であるinbound(米国からみて)取引が中心であるのに対し、インドとの案件は米国企業とインド子会社との間の取引、つまりoutbound取引が殆どと思われます。インドでは2012年よりAPA制度が導入されたものの、インド税務当局の米国系企業に対する苛烈な課税もあり両国当局間の関係は悪化していましたが、最近それが改善され二国間APAが合意できる環境になったことが申請件数急増の背景となっています。両国の経済成長率の差から、この差は将来もっと開いていく可能性もあります。

2.処理件数

(1)全般

2016年度の処理件数は86件と、2014年度の110件に比べて-24件と大きく減少しました。また処理件数全体に占める新規APA処理件数は37件(全体の41%)と、2015年度の44件(全体の40%)から件数は-7件、割合は微増となりました。APAプログラムを担当するAPMA(Advance Pricing and Mutual Agreement) Officeにおける改革派幹部の一斉退職(2014年)や全般的な人手不足が影響していると考えられます。

(2)二国間APA処理件数の国別内訳

処理件数のうち65件(76%)は二国間APAとなっています。また二国間APAの相手国としては、日本が54%と圧倒的にトップであり、次点のカナダ(20%)と合わせて全二国間APA処理の約4分の3が日本又はカナダの案件であった事になります。これまでの蓄積ベースでは対日本取引のシェアが未だに大きい事がわかります。

(3)処理件数の業種別内訳

2016年度処理件数86件の業種別内訳では、製造業が40件(47%)と最大であり、卸売・小売業が33件(38%)、サービス業が6件(7%)と続きます。この順番は例年通りですが、2016年度はサービス業が前年の12件(11%)から減少しました。ちなみに日本ではAPA処理件数に占める製造業の割合は64%(平成27事務年度)と米国よりも更に高くなっています。

(4)移転価格算定方法

比較対象企業の利益率を検証する方法であるCPM/TNMMが相変わらず大多数を占めており、有形・無形資産取引の89%、役務提供(サービス)取引の76%で適用されています。

3.繰越件数

申請件数が処理件数を上回ったものの、企業による取下げ件数が24件(2015年は10件)と多く、2016年12月末の繰越件数は398件となり、2015年末の410件から12件減少しました。

4.平均処理期間

2016年度の平均処理期間は37.9ヵ月と、2015年度の36.7ヵ月(約3年)から若干延びました。最悪であった2009年の45ヵ月からみると改善しているものの、日本のAPA平均処理期間の26.0ヵ月(平成27事務年度)に比べると1年近く長くなっており、更なる改善がのぞまれます。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2017年6月号掲載記事より転載)

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