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2015年7月:厳格化する中国の国際課税

中国の経済成長率は減速しつつも2014年も7.4%と、マイナス成長に喘ぐ日本(2014年-0.9%)のみならず東南アジアの他の新興国に比べても高い成長率をキープしています。しかしながら個人的な現場感覚では、中国の実態の経済状況は少なくとも東南アジア諸国との比較上、数字ほど良くはないと感じます。そのような中、外資企業に対する中国税務当局の姿勢も変わってきています。かつては2免3半減などの企業所得税優遇策で投資を呼び込みたいという意図もうかがえましたが、2008年度の税制改正以降は2免3半減もなくなり、最近はいかに果実を沢山刈り取るか、つまりいかに多額の税金を徴収するかに腐心している事が随所にうかがえます。

例えば、中国国家税務総局(SAT)は、移転価格、タックスヘイブン、過小資本税制などを含む租税回避問題に対する税務調査の結果、2014年に523億元(約1兆円)を追徴課税したと発表しています。この内約75%(396億元)が税務当局の書類調査による指摘を受けた企業側の修正申告による税額増加分ですので直接の比較は難しいものの、対応すると考えられる日本の国税庁発表による海外取引に係る申告漏れ所得額の合計が直近の平成25事務年度において1,783億円(所得額なので、追徴税額は更に少なくなる)である事からも、中国の追徴税額の大きさがわかります。

国外への支払に対する厳しい姿勢

SATが最近特に注力しているのは、外資企業の中国子会社から国外の関連会社への過大な支払の防止です。昨年7月号でも、米国親会社へのサービスフィー支払の妥当性判断に関して6項目のテストを課している事を紹介しましたが、その後2014年7月29日、「高額な国外支払いに伴う租税回避防止調査に関する通知(税総弁発. [2014]146号)」を発表、全国の地方税務当局に対し、国外関連者への相当額のサービスフィー、ロイヤルティの支払に対する税務調査を開始するよう要求しました(但しタックスヘイブンなど低税率国への支払いに特に注意すべきとしています)。更に今年2015年3月18日、「企業の国外関連者への費用支払に係る企業所得税問題に関する公告(国家税務総局広告2015年第16号)」を公布、経営活動の実体を有しない国外関連者への費用支払、中国企業に経済的利益をもたらさないサービスフィー支払、無形資産の価値創造に貢献のない関連者に対するロイヤルティ支払等については損金算入できないなど、先述した“6項目のテスト”が実質的に明文化されました。中国ではUSD50,000以下の海外送金が原則自由となり送金規制が緩和された一方、このように関連者向け支払に関する税務調査は大幅に厳格化されましたので、支払においては先々の税務調査の可能性を考え、上記新規則への十分な対応が必要です。

外資系企業に対する巨額の課税

最近中国では、外資企業に対する過去に例を見ない巨額の課税事案が次々と明らかになっています。例えばシャープ株式会社は今年2月3日、江蘇省の子会社が移転価格税制に基づき約600億円相当を所得更正され、101億円相当を追徴課税される見込みとなったと発表しました。日系企業以外ではやはり米国系が多く、2014年1月には、米国デル・コンピュータ社が福建省アモイ市の税務当局より、中国子会社がシンガポールの関連会社に対して支払うサービスフィーが高額過ぎるとして150億円相当の追徴課税を受けたとの報道がありました。また2014年11月には、米国マイクロソフト社の中国子会社が840百万元(170億円相当)を中国税務当局に追徴課税されたとの報道がありました。これは後日マイクロソフト社の発表により税務調査ではなく移転価格に関する二国間APA(事前確認)の協議で合意して支払ったものだと判明しましたので、その分米国で還付が行われていれば納税者のマイクロソフト社にとっては二重課税ではありませんが、巨額の税金を中国が獲得したことには変わりありません。マイクロソフト社のケースも、中国子会社が収益の半分以上を米国本社に支払い、その結果相当な赤字を計上した事を指摘されたようです。これらの課税事案にも示されている通り、国外関連者向け支払に関する中国の税務調査は更にアグレッシブになってきたと言えます。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2015年7月号掲載記事より転載)

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