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2015年5月:米国におけるAPA及び相互協議の状況(統計レポートより)

米国内国歳入庁(Internal Revenue Service、以下“IRS”)による、国際課税に関する年次統計データが最近相次いで発表されました。以下、それらレポートの概要を紹介します。

1.APAレポート

2015年3月27日付で、IRSは2014年度のAdvance Pricing Agreement(以下“APA”)に関するレポートを発表しました。APAとは、関連者間取引の価格決定方法に関する企業と税務当局間における事前の合意であり、合意された年度については原則税務調査の対象外となります。特に、APAを関連者間取引の両当事国間で最終的に合意してもらう二国間APAは、両国における税務調査リスクを回避する究極の税務リスク対策と言えます。本APAレポートの概要は以下の通りです:

(申請件数):2014年度のAPA申請件数は108件と、2013年度の111件に比べほぼ横ばいとなりました。但し2014年12月末現在、申請フィー支払済にもかかわらず未申請の案件が別途33件ありました。

108件のうち二国間APAの件数は77件(内3件は多国間)と、2013年度の91件から大幅に減少しました。二国間APAの相手国で最も多いのは日本(41%)、次がカナダ(12%)と、米国で申請された二国間APAの半分以上をこの両国向けが占めています。特に日本案件の多さは(後述の処理件数も含め)目を引きます。

(処理件数):2014年度の処理件数は101件と、過去最高値を更新した2013年度の145件から一転、大幅減少となりました。APAプログラムが相互協議部門と統合したAPMA(Advance Pricing and Mutual Agreement) Officeの現directorであるHareesh Dhawale氏は、減少の原因はAPA申請内容の複雑化、IRS担当職員の転職あるいはそれによる職員一人当たり仕事量の増加等複合的な要因によるものと説明しています。ただ、APMA Office初代directorのRichard McAlonan氏のリーダーシップの下で進めてきた処理の迅速化が、McAlonan氏が昨年6月に退任した事により影響を受けていないか、若干懸念されます。

処理件数のうち81件(80%)は二国間以上のAPAであり、さらにその内47%は日本が、15%はカナダが相手国となっています。

以上の通り、2014年度は処理件数(101件)が申請件数(108件)を7件下回りましたが、申請済案件の取り下げ等もあり、2014年12月末の繰越件数は336件と、2012年末の331件から5件の増加にとどまりました。

APAの平均処理期間は、2012年度41.7ヵ月から2013年度は36.2ヵ月へと短縮しましたが、2014年度は処理件数の大幅減を反映してか38.3ヵ月へと再び増加しました。

2.相互協議統計

2015年4月16日付で、IRSの大規模事業及び国際部門(Large Business and International Division、“LB&I”)は、2014年度相互協議統計(Competent Authority Statistics)を発表しました。相互協議とは、多国籍企業が米国または相手国で所得税の追徴課税を受け二重課税が発生した場合、租税条約に基づいて二重課税を解消する為両国の権限ある当局(competent authority)が協議する制度です。本統計では、前掲のAPMA Officeが移転価格及びPE課税など事業所得配分案件の、租税条約補助解釈チーム(Treaty Assistance and Interpretation Team、“TAIT”)がその他(ロイヤルティ、配当金の源泉課税等)案件のデータを提供しています。今回はAPMA Officeの統計値を紹介します。

(申請受理件数):2014年度の申請受理件数は286件と、2012年度の181件、2013年度の266件から増加しました。但し2013年度の件数は15ヵ月ベース(APAレポートにあわせて9月末締から12月末締に変更)であり、実質的な2014年度の対前年比増加率はより高いといえます。内訳としては米国課税案件が86件、米国外課税案件が200件と、米国外案件が米国案件の2倍以上を占めています。

(処理件数):2014年度の処理件数は133件(内訳:米国課税案件48件、米国外課税案件85件)と、2013年度の159件(15ヵ月ベース)から26件減少しましたが、2012年度の90件に比べると増加しています。処理件数の増加ペースは申請受理件数よりも鈍いものの、その中味をみると、全面的に二重課税が解決した案件(full relief)の割合が2013年度の42%から2014年度は88%と大幅に増加しました。この事から、相互協議の処理結果は質的には大幅に改善したといえます。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2015年5月号掲載記事より転載)

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