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2015年4月:インドネシアが新APAガイドラインを公表

インドネシアでは2015年度最終予算案が先日議会により承認されましたが、財政赤字削減及び公共投資拡大の為、税収は昨年比約30%増の約1,400兆ルピア(約14億円)とかなりアグレッシブな目標に設定されました。その内、移転価格税制による更正により200兆ルピア(約2兆円)の税収を見込んでいるとの事です。2兆円という目標値は、日本の直近の移転価格課税実績が1,000億円弱(更正所得ベース)である事を考えるとあまりにも高いようにも思えますが、実際インドネシアに進出している外資系企業の殆どが移転価格課税を受けていると推定される現状を見ると、不可能と断言はできないかもしれません。いずれにしても、インドネシアにおける過激な移転価格税務執行は今年も続くと国が宣言しているに等しいことです。

そのような中、Advance Pricing Agreement(“APA”)に関する詳細なガイドラインが税務当局DGT (Director General of Taxation)により発表されました。APAとは、関連者間取引の価格決定方法に関する企業と税務当局間における事前の合意であり、それにより合意の対象となった年度については税務調査の対象外とする事を目的としています。特に、APAを関連者間取引の両当事国間で最終的に合意してもらう二国間APAは、両国における税務調査リスクを回避する究極の税務リスク対策と言えます。2010年12月に発行された最初のAPA規則は比較的簡素な内容であり、特に二国間APAに関する規則が不明確であった事から、詳細なガイドライン発表が、特に費用対効果の面からAPA締結のメリットが大きい大企業からは待ち望まれていました。以下、本APAガイドラインの概要を紹介します。

適用期間:旧規則では一律最大3年でしたが、本ガイドラインでは、インドネシア一国向けAPAが最大3年、二国間APAについては最大4年と定められました。但し日本のAPA規則では5年が認められるのに対し1年短くなっており、日本−インドネシア二国間APAを申請する場合は原則短い方の4年に合わせざる得ない可能性があります。

事前相談:日本ではAPA申請前に国税庁に対し事前相談を行うか否かは企業の任意ですが、インドネシアでは事前相談を行う事が義務化されており、重要性が非常に高くなっています。提出書類の詳細な内容も定められており、更にDGTは事前相談段階で情報収集のため企業訪問を行う事が出来るとされています。APAを全面的に推進するというより、当面は大企業の取引、移転価格上問題が少ない取引など限られた案件に絞り込みたいというDGTの意向が伺えます。

APA申請:上記の事前相談の結果、DGTより申請許可のレターをもらった企業に限りAPAの正式申請が可能です。申請期限はAPA適用開始年度の前年度末までとなっています。

APA審査:DGTによるAPA審査期間は申請受理後1年以内となっていますが、状況による最大1年間の延長が可能となっています(但し二国間APAの場合DGTの審査終了後に相手国税務当局との相互協議があります)。

APA合意書:審査や相互協議を経てAPA申請が認められる場合、合意された移転価格算定方法などの内容を含むAPA合意書に企業とDGTが署名します。

年次報告書提出:適用対象年度終了後4カ月以内に企業は、合意した移転価格算定方法に従って算定した結果が独立企業間原則を遵守しているか否かに関するAPA年次報告書をDGTに提出する義務があります。

APA更新:APA適用最終年度に更新申請が可能です。手続は上記の新規手続に準じます。

税務調査との境界:APA申請の為に提出された資料は税務調査に使用されてはならないと明記されている一方、APA申請は既存の税法に基づく税務調査の進行を妨げるものではないとも記されています。基本的にAPA期間中に申請対象取引について移転価格税務調査が入る可能性は低いものの、例えばAPA申請対象外の関連者間取引に関する移転価格税務調査、移転価格以外の税務調査についてはAPA期間中でも可能と解されます。

遡及適用:APA適用対象年度以前の移転価格税務調査未了年度にもAPAの合意内容を適用するという遡及適用(“Rollback”)制度については、本APAガイドラインでは明確な記載はありません。しかし、そもそもインドネシアでは、外資系企業は毎年移転価格税務調査を受けるのが普通ですので、遡及適用の対象となる税務調査未了年度が残っていないのが普通です。よって遡及適用の有無は実質的にはあまり意味がないといえます。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2015年4月号掲載記事より転載)

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