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2015年3月:OECDがCbCレポートの実施ガイダンスを公表

経済協力開発機構(OECD)とG20諸国が共同で推進しているBEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と所得の移転)に対する15項目の行動計画(以下“BEPSプロジェクト”)のうち行動13「移転価格文書及び国別報告書(Country-by-Country report、以下“CbCレポート”)」に関しては、昨年9月にOECDにより第一次提言が発表され、移転価格文書の同時文書化を関係各国が導入する事が強く推奨されました。また移転価格文書の構成として(a)マスターファイル、(b)ローカルファイル及び(c)CbCレポートの三層構造とする旨定められました。

CbCレポートとは、多国籍企業グループの売上高(関連者向け/非関連者向け内訳を含む)、税前損益、支払税額(税務上及び会計上)、法定資本金、利益剰余金、従業員数、及び有形資産額(現預金等を除く)を、当該企業の全グループ会社が所在する国別に一覧表にまとめた様式の報告書であり、企業のそれら数値に関する国別の配分状況を税務当局が容易に把握できるようになっています。具体的には、従業員数や有形資産額が非常に少ない実体の乏しい国(特に軽課税国)に多くの利益が配分されているような、いわゆる租税回避の状況の有無について確認したいというのが各国税務当局の本音でしょう。特に、そのような世界的タックス・プランニングを積極的に行っている米国企業が主なターゲットになる事が推測されます。

日本では既に、法人税申告時に別表17(4)にて国外関連者情報を毎年提出していますが、CbCレポートでは別表17(4)に記載義務のない支払税額や有形資産額などの開示が必要となる他、それら情報が原則関連会社の所在する各国に自動的に送られる事になる為、コンプライアンス負担や情報漏えいリスクの増加等が本邦産業界からも懸念されています。

今般OECDは、CbCレポートの提出開始時期や適用免除基準等、運用に関する実施ガイダンスを2015年2月6日付で公表しました。以下同ガイダンスの概要を紹介します。

(1)時期

本実施ガイダンスでは、CbCレポート提出は2016年度分から開始し、提出は対象事業年度末より1年以内としています。つまり、12月決算の企業であれば2016年12月期分のCbCレポートを2017年12月末まで、3月決算の企業は2017年3月期分のCbCレポートを2018年3月末までの提出が必要となります。

(2)提出対象企業(適用免除基準)

本実施ガイダンスでは、直前事業年度の年間連結売上高が750百万ユーロ(1ユーロ=135円で約1,000億円)未満の企業を除く全ての多国籍企業がCbCレポート提出義務を負うとしました。この免除基準適用により、全多国籍企業数の85〜90%がCbCレポート提出義務を免除される一方、法人所得額の約90%は把握できるとOECDは述べています。

(3)必要条件

本実施ガイダンスは、関係各国はCbCレポートを取扱うに当たって以下3つの条件に合意したとしています:

  • 守秘義務:提出された情報について機密性を保護する法的措置を講じる。
  • 一貫性:昨年9月に定められたCbCレポートの標準様式を一律に用いる。
  • 適切な使用:CbCレポートの使用は移転価格の概括的リスク把握等にとどめ、同レポートの情報を基に所得配分(例:従業員数や有形資産額の割合で課税所得を再計算する)による更正課税を行ってはならない。
  • (4)政府間情報交換の枠組み

    本実施ガイダンスでは、原則各企業の親会社がその所在地国の税務当局にCbCレポートを提出し、その後租税条約等の情報交換規定に基づき自動的に関係各国の当局に送付されるとしています。但し、親会社の所在国がCbCレポート提出義務を課していない、子会社所在国との間で自動情報交換規定が存在しない等の場合は、子会社がその国の税務当局にCbCレポートを提出する等の二次的措置が認められるべきとしています。

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    OECDは国家ではないため、その作成するガイドライン自体に強制力はないのですが、今回の対BEPSプロジェクトは中国、インドなど新興大国を含むG20を巻き込んで大々的に推進されており、日本を含めたOECD加盟国は移転価格文書化に関し昨年9月の提言や本件実施ガイダンスに則して自国の税制を改正せざるを得ないと思われます。従って連結売上高が750百万ユーロ以上の企業はそれを見越した早めの対応が望まれます。

    (執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

    (JAS月報2015年3月号掲載記事より転載)

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