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2014年12月:グループ間サービス取引(IGS)に関するOECDガイドライン改定案

今年(2014年)はOECD(経済協力開発機構)移転価格ガイドラインの改定または改定案の発表が相次ぎました。これは、OECDがG20との協働で推進しているBEPS(税源浸食と利益移転)対策プロジェクトにおいて、OECDガイドラインの改定という形で行動計画が実施に移されている事によります。9月16日付で第5章「文書化」改定の最終版、及び第6章「無形資産」の改定案が発表されたのに続き、11月3日付で第7章「Intra-Group Services(企業グループ間サービス取引、以下“IGS”)」の改定案が、対BEPS行動計画No.10(JAS月報2013年8月号参照)への対応措置として発表されました。本改定案の最大のポイントは、企業にとって主たる事業ではない低付加価値IGSについては、通常の移転価格算定方法よりも簡素な方法で対価を算定してもよいという内容のガイダンスを追加した事です。以下、追加されたガイダンスの概要を紹介します。


低付加価値IGSの定義:

  • 補助的な性質を有する
  • 企業集団の主要な事業の一部ではない
  • 独自の価値ある無形資産を必要としない
  • 大きなリスクを負うものではない
  • 低付加価値IGSの例:

  • 会計・監査サービス
  • 売掛・買掛金に係る事務管理サービス
  • 人事サービス(人事、研修、給与計算等)
  • 安全衛生管理サービス
  • ITサービス
  • 広報サポートサービス
  • 法務サービス
  • 税務サービス
  • その他事務的な性質を有するサービス
  • 簡素な算定方法が適用できないサービス:

  • 企業の主たる事業の一部であるサービス
  • 研究開発サービス
  • 製造・生産サービス
  • 営業・販売・流通活動
  • 金融取引
  • 天然資源の採取、開発、処理
  • 保険及び再保険
  • 企業の上級管理職によるサービス
  • 簡素な算定方法:

    (1)コストの集計:低付加価値サービスの類型毎に、全てのかかったコストを集計する。但し、自社の便益のために要した費用は除く。また、ある特定の関連会社向けに要した費用は(その会社に直接請求できるため)除く。

    (2)費用の配賦:サービスの受領により各関連会社が受ける便益の水準を合理的に反映した配賦基準を用いる。例えば、人的サービスの費用は従業員数、ITサービス費用はユーザー数、車両管理サービス費用は車両数、会計サポートサービス費用は取引数または総資産額が適切な配賦基準であろう。その他多くの場合、売上高が最も適切な配賦基準であろう。

    (3)利益の付加:上記(1)、(2)で算定した間接費、及び特定の関連会社向けに要した直接費に2〜5%の範囲で定めた利益を付加する。

    文書化:

    簡素な算定方法を適用したい企業は、以下の内容を含む文書を事前に作成し、サービスの提供国または受領国側の税務当局から請求あり次第提出できるようにしておく必要がある。

  • サービスの概要(類型毎に):低付加価値サービスである理由、便益の内容、配賦基準及びその選定理由 等
  • 各サービスに関する契約書等の社内文書
  • 費用集計及び各社への費用配賦の詳細
  • (考察)

    本改定案は、関連会社間の補助的なサービス業務に対して費用対効果の観点から簡略的な対価算定方法を示しているという点で評価できます。但し、米国では同様の簡略的方法が2009年に最終化されており、本改定案は実質的に米国規則の後追いである感は否めません。大きな違いは、米国では一定要件に該当するサービスはコストのみの請求でよいとするのに対し、本改定案では2〜5%の利益付加が必要とされている点です。日本でも、このような補助的サービス取引については費用のみの請求を認めていることから、この改定案がこのまま最終化されれば、日米の規則と合致しない事となり、特にOECDガイドラインへの準拠を明示する日本の税制は修正が予想されます。またOECDガイドライン自体でも、第7章の他の部分では、サービスの重要性如何等によっては費用のみの請求もあり得る事を示唆しており、第7章自体の中でも矛盾が生じているように見えます。本改定案が最終的にどのように改定されるか注目されます。

    (執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

    (JAS月報2014年12月号掲載記事より転載)

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