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2014年10月:OECDが対BEPS第一次提言を公表

経済協力開発機構(OECD)が昨年打ち出したBEPS(Base Erosion and Profit Shifting、税源浸食と所得の移転)に対する15項目の行動計画(以下“BEPSプロジェクト”)については、既に本稿(JAS月報2013年8月号)で紹介済ですが、その内7項目(行動1:デジタル経済、行動2:複合的なミスマッチ取引、行動5:有害な税慣行、行動6:租税条約の濫用、行動8:無形資産に関する移転価格ルール、行動13:移転価格文書及び国別報告様式、及び行動15:多国間協定)について、OECDは9月16日付で第一次提言を発表しました。

本BEPSプロジェクトは、OECD加盟34ヶ国に加え、中国、ブラジル等のOECD非加盟G20諸国も含めた計44ヶ国による共同プロジェクトであり、世界経済の90%を占めると言われるこれら44ヶ国の協調により作成される各種提言を各国の税制に反映させる事により、多国籍企業による軽課税国への所得移転等過度な節税を防止する事が目的です。特に節税をアグレッシブに行っている米国系企業が主なターゲットと言われていますが、日本など他の参加国においても、本BEPSプロジェクトの提言を踏まえて今後様々な税制改正が行われると予想されます。今回は、つい先日(9/17)の日本経済新聞の朝刊1面でも「グループ取引報告義務」として報道された(行動13)の提言について紹介します。

(行動13)に関する提言(ガイダンス)の概要

本ガイダンスは実質的には、今年1月公表のOECD移転価格ガイドライン第5章「文書化」(“Documentation”)の改定草案を最終化したものです。よって、内容は先の改定草案(JAS月報2014年4月号にて紹介済)を踏襲していますが、主な変更点は以下の通りです:

(1)二層構造→三層構造アプローチへ

改定草案では、移転価格文書は(a)マスターファイル(企業グループ全体の基本情報で構成)、及び(b)ローカルファイル(企業グループ内の個々の法人に特有の情報で構成)の二層構造にて作成されるべきであり、マスターファイルには、グループ全企業の詳細な情報を網羅して税務当局に開示するCountry-by-country reporting(以下“CbCレポート”)を添付すべきとしていました。しかし最終版では、(a)マスターファイル、(b)ローカルファイル及び(c)CbCレポートの三層構造とすると修正され、CbCレポートをマスターファイルの一部ではなく、移転価格文書の独立した構成部分であると位置付けました。

(2)言語

改定草案では、一般的にマスターファイルは英語で作成され、ローカルファイルは現地国語で作成、必要に応じて税務当局はマスターファイルの自国語への翻訳を要求するとなっていました。しかし最終版では、「各国は移転価格文書を共通に使われる言語で提出する事を許容する事が奨励される」と、英語に特定する事を避けました。

(3)CbCレポートの様式

改定草案では、一つの表に所在国、企業名、実質支配地、主たる業種、損益・資産情報、税金情報、給与支払総額、ロイヤルティ、金利、サービスフィーの各受取・支払額の記載が要求されていました。それに対し最終版では表を2つに分け、一つ目の表(表4)では税務上の管轄国毎に(一つの国に複数の拠点があれば合計して表示)損益・資産、支払税額等の情報を記載し、二つ目の表(表5)では税務上の各管轄国における全拠点名とその設立地(現在の所在地と異なる場合のみ)、及び主たる業種を記入するようになりました。

(削除された項目)実質支配地、法人税支払額の内訳(自国、他国)、源泉税支払総額、給与支払総額、ロイヤルティ、金利、サービスフィーの各受払額

日本への影響

日本の場合、法人税申告書別表17(4)にて、国外関連会社の損益、資本関係、本社との取引額等、今回OECD提言で示された以上に詳細な情報の開示を既に求めています。但し法人税額、有形資産額など新たな開示項目もあり、また国別に数字の合算が必要になる等、本提言を受けて別表17(4)が改定されれば、海外に子会社を有する企業の事務負担が増す事が予想されます。僅かな朗報としては、改正草案にあった給与総額、源泉税支払額の“余計な”開示情報が削除された事でしょう。


(※本提言の詳細は、OECDウェブサイトで公開されている原文(英語)をご覧ください。)

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2014年10月号掲載記事より転載)

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