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2014年6月:欧州で続く米国IT企業への課税

経済協力開発機構(OECD)が昨年7月に発表した対BEPS (Base Erosion and Profit Shifting、“税源浸食と所得の移転”の意)15項目のアクション・プランを受けて各国の税務当局が対応に追われています。元々BEPSプロジェクトがOECDで生まれるきっかけとなったのは、米国IT企業が欧州主要国で租税回避行為を行っている事が原因と言われていますが、欧州各国のそれら米国IT企業への風当たりは、BEPSアクション・プランを追い風に更に強まっているようです。以下、最近のイタリアとフランスにおける事例を紹介します。

1.アップルvs.イタリア

i PhoneやiTunes等でお馴染みの米国のApple Inc. (アップル)ですが、イタリアの税務当局から租税回避に関する指摘を受けていることが明らかになりました。税務当局が今年5月12日に発表した文書では、アップルはイタリアにおいて2013年度に300百万ユーロ(約420億円)の売上を上げながら8百万ユーロ(約11億円)の法人税しか支払っておらず、2010年以降10億ユーロ(約1,400億円)追加で納税すべきであるというものです。当局の調査は2013年11月より始まり、現在でもアップルの上級マネージャー級の従業員2名がミラノで調査を受けている最中とのことであり、この文書で発表された数字はあくまで税務調査における途中経過である模様です。

イタリアの法人税率(実効税率27.5%)で単純計算すると、8百万ユーロの税金を払っているということは29百万ユーロの税引き前利益をあげている計算になりますので、売上高税引き前利益率は29/300=10%弱と、日本では高収益企業の類に分類される数字を残しているのにもかかわらず、租税回避と言われるのは不思議な気もします。しかしアップル全体でみると、2013年度の連結損益計算書における売上高税引き前利益率は約30%と非常に高い収益率を誇っており、それに比べるとイタリア事業の利益率は低すぎるという事でしょうか。更に、アップルは連結売上高の60%もが軽課税国(法人税率12.5%)のアイルランドにある子会社で計上されているとして、本拠地米国の上院委員会でも問題視されましたが、イタリア税務当局も、本来イタリアで計上すべき売上の多くがアイルランドであがっており、本来イタリアで計上すべき売上は300百万ユーロより遥かに多額に達する筈であると主張している可能性もあります。現在のアップルは、おそらくイタリア事業で上げた売上もアイルランド子会社が計上し、イタリア子会社は要した費用+αのサービスフィーだけもらっているような、典型的な米国IT企業型の欧州事業形態を採用しているかもしれません。勿論それ自体が違法であるという訳ではありませんが、移転価格税制上、そのようなスキームがイタリアとアイルランドの各子会社の機能・リスクに見合っているかどうか、つまり、例えばアイルランドに売上を計上するだけの人員、施設等の実体があり、営業活動が実際に行われているのか等が問題視されているものと思われます。

2.グーグルvs.フランス

ネット検索最大手のグーグルは、今年4月24日付で米国証券取引委員会に提出した報告書の中で、今年3月にフランスの税務当局より更正課税を受けた事を明らかにしました。同報告書の中で更正金額、追徴税額等は示されていませんが、フランスの某週刊誌では、更正金額は10億ユーロ(約1,400億円)を超えると報道されているようです。更正理由も報告書に書かれていませんが、今年の初め頃にフランス税務当局が、グーグルが欧州において専らアイルランド子会社で売上を計上している事業スキームに異議を唱えているとの報道があったことから、移転価格課税または恒久的施設(“PE”)課税により、アイルランド子会社で計上されていたフランス関連の所得がフランス子会社またはフランスのPEに帰属すると認定されたのではないかとも推測されます。

フランスとグーグルとの対立関係は近年特に激しく、例えば2010年1月、大手ネット広告企業が得る広告収入の一定割合を徴税する、明らかにグーグルをターゲットとした通称“グーグル税”を政府が提案すると、翌2011年6月には、グーグルがフランスにPEを有するかを調べるための強制捜査がグーグルのパリ事務所に入っています。


アイルランドを利用した米国企業の節税的事業スキームに対する欧州主要国からの批判は強まる一方であり、今後の動向が益々注目されます。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2014年6月号掲載記事より転載)

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