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2014年4月:OECDが移転価格文書化に関するガイドラインの改定案を公表

経済協力開発機構(以下“OECD”)は、昨年7月に税源浸食と所得の移転(Base Erosion and Profit Shifting、以下“BEPS”)問題に対するアクション・プランの一つとして「移転価格文書化規則の改正」を、及び同月30日に「移転価格文書に関する白書」を相次いで発表し、移転価格文書化ルールの改革に取り組んでいますが、その仕上げとして今年1月30日、自ら発行する移転価格ガイドライン第5章「文書化」(“Documentation”)の改定案を発表しました。

今般の流れの中でOECDが目指している点は大きく分けて二つあり、一つはマスターファイル・アプローチを用いた企業の文書化プロセスの簡略化とコスト削減、もう一つは企業情報の開示を大幅に強化することによる透明性の向上です。これらを具体化した本改正案は、内容が抽象的な現行の第5章に比べ大幅な改定となっています。OECDガイドラインへの準拠度では世界有数の移転価格税制を有する日本は、現在は正式な移転価格文書化規則がありませんが、本改定案がこの内容で最終化されれば、一気に文書化規則の制定へと動かざるを得ないでしょう。そうなると日本企業のコンプライアンス負担は間違いなく増加するでしょう。更に、文書化規則を有するもののマスターファイル・アプローチを採用していない米国、中国なども規則の大幅改正を行う可能性があり、その意味では本改定案が企業及び税務当局に及ぼす潜在的インパクトは非常に大きいと考えられます。

改定案の概要

1.二層構造アプローチの採用

本改正案では、EUにおいては既に採用され(但し企業の選択により適用)、OECDでも検討されていたマスターファイル・アプローチが遂に採用されました。マスターファイル・アプローチとは、移転価格文書をマスターファイル及びローカルファイルの二層に分ける方法です。企業グループ全体の基本情報が含まれるマスターファイルはグループ本社が作成し、各関連会社は自社に係る部分のみローカルファイルを作成し、あわせて1セットの文書として準備することにより、グループ全体としての文書作成コスト削減につながると期待されています。

1-(1)マスターファイル(英語作成要)に含まれるグループ情報:

(a)組織構造(資本関係等)、(b)事業内容(主要な取引におけるサプライチェーン図、事業分野毎の高額報酬従業員上位25名の肩書及び所在国名、等)、(c)無形資産(重要な無形資産とそれらの所有者のリスト等)、(d)金融活動(資金調達方法の説明等)、(e)財務状態と納税状況(連結財務諸表、関係するAPA・相互協議等に関する説明)

1-(2)国別レポート(マスターファイル添付):

マスターファイルに添付すべき資料として、グループ全社の情報をリスト化したCountry-by-Country (以下“CbC”)レポートをグループ本社が作成する必要があります。開示情報としては、各社の損益、納税額、従業員数、給与総額、無形資産、金融、役務取引の受払額であり、このCbCレポートを見ればグループ各社の損益、法人税納税額等のグローバルな配分状況が一目瞭然となります。

1-(3)ローカルファイル(現地国語で作成)の内容:

(a)対象企業の経営組織、及び直近年度に関与した事業再編や無形資産譲渡に関する説明、(b)対象企業が行う関連者間取引のカテゴリー別情報(取引内容、取引額、機能リスク分析)及び移転価格算定(関連者間取引が独立企業間原則に基づいている事を証明する)、(c)対象企業の財務情報、移転価格分析で用いた対象取引のセグメント情報、比較対象取引の財務データ及び情報源。

2.作成時期

マスターファイル及びローカルファイルについては、対象事業年度の税務申告期限までの作成が最も望ましいとし、いわゆる同時文書化を推奨しています。一方CbCレポートについては、本社の事業年度終了日から1年以内の作成が望ましいとしています。

3.重要性

全ての関連者間取引について文書化の対象とする事による過大なコスト負担を避ける為、文書作成を必要とする最低基準値が設定されるべきとしています。

4.文書の更新頻度

企業のコスト負担軽減の観点から、事業状況が変わらない限りローカルファイルの比較対象取引のデータベース検索は3年毎の更新が認められるとしています。但しこの場合でも比較対象取引の財務データは毎年更新しなければならないとしています。

次号では、本改正案自身が提起する疑問点、及び本改正案の特徴や問題点等について説明します。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2014年4月号掲載記事より転載)

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