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2014年3月:米国が移転価格調査のロードマップを公表

米国の内国歳入庁(IRS)は2月14日、移転価格調査のロードマップ(Transfer Pricing Audit Roadmap)を発表しました。これは、IRSの国際取引担当税務調査官のために、移転価格税務調査のプロセスのガイドラインとして作成されたものですが、このようなガイドラインは納税者にも有益であろうとの判断から、ウェブサイトで一般に公表されました。

全26ページの本ロードマップは、調査開始から終了までに要する標準的期間を2年間とした上で、調査を大きく分けてplanning(計画)、execution(実施)、及びresolution(終結)の3つのフェーズ(段階)にわけています。その中でも調査前の事前分析、つまりplanningの重要性が強調されており、全プロセスの約3分の2がplanningフェーズの説明で占められています。IRSとしては、最近Veritas Software等巨額の課税案件訴訟で敗訴するなど移転価格調査の執行面で苦労している中、十分な事前準備を改めて徹底させる事により、後日納税者との軋轢を招く事態を極力解消したいという意向があるものと思われます。以下、本ロードマップに描かれているステップの中から主なものを紹介します。

1.調査の標準的期間

(1)planning:最大6か月(但し調査開始以前の事前分析期間も含む)

(2)execution:最大14か月

(3)resolution:最大6か月

2.planningフェーズ(注:以下のプロセスは必ずしも記載の順番通りに進めるべき事を意味せず、また重複もあり得る)

  • 調査対象企業の関連者間取引に関する法人税申告書別表(Form5471、5472等)を調査
  • 調査対象企業の利益率を調べ、業界平均と比較し、所得の海外移転の有無を検討
  • SECのForm 10-K等を通じて調査対象企業の背景、業歴、事業内容等を調査
  • 税務調査の時効年度について確認
  • 移転価格文書及び関連資料を企業に請求の上、入手した文書を分析し問題点を抽出
  • 事実調書を作成(調査の進展に応じて逐次更新される)
  • 企業との事前準備会議(企業側担当者の特定など、主に調査の手順に関する打合せ)の開催
  • 移転価格説明会(主に企業側から事実概要に関する説明を受ける)の開催
  • 初期リスク分析を行いIRS上層部と協議の上、税務調査プランを確定し、企業に通知

3.executionフェーズ

  • 追加資料の請求、企業側へのインタビュー、及び工場見学等のサイト訪問
  • 上記により収集した情報を基に機能分析及び比較対象分析を実施
  • 企業側とミーティングを行い、IRSが把握した重要な事実関係について相違がないかを確認
  • 上記調査過程より得た情報を基にリスク分析及び作業仮説(working hypothesis)を更新し、今後更に追求すべき取引を取捨選択
  • 経済分析の実施、及び分析レポート作成
  • 相互協議レポートの準備(該当する場合)、及びAMPA(APA相互協議部門)との調整

4.resolutionフェーズ

  • 更正案通知(NOPA)を最終化する前に、企業にIRSの全ての認識を伝え、企業側がそれに同意するか否かを確認の上、最終的なポジションを固める
  • 最終ミーティングを企業と行う
  • 問題点が全て討議し尽され、終結作業が完了後、最終NOPAを企業に送付

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2014年3月号掲載記事より転載)

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