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ライブラリ(国際税務関連記事)


2014年1月:インドで相次ぐ巨額の課税(2)

2013年3月号で、インドにおいて欧米系の外資企業が巨額の課税を受けたケースを紹介しましたが、その後の状況や新たなケースも含めて続報します。

ノキア

フィンランドに本社を置く世界最大の携帯電話機メーカーであるノキアは、インドの税務当局から巨額の追徴課税を要求されています。追徴税額は一般紙の報道では円換算で約500億円との事でしたが、2006年から2013年度までに関して総額3,400億円相当の追徴課税を要求されているとの専門筋報道もあります。課税の理由としては、ノキアのインド子会社が国外関連会社に支払う携帯電話ソフトウェアの使用料に関して、源泉税を徴収すべきと認定されたといわれています。

また、2013年9月には米マイクロソフト社がノキアの携帯電話事業をUSD72億(約7,300億円)で買収すると発表していますが、インド南部のチェンナイにあり従業員約8,000人を雇用するノキアの携帯電話生産工場が、インドの税務当局により差し押さえられていました。同差し押さえを解除しないとマイクロソフトへの事業売却が進まないため、ノキアの調停努力の結果、デリー高等裁判所は2013年12月11日、ノキアがUSD367百万を預託する事と引換えに差し押さえを解除することに合意しました。しかしながら税務訴訟全体としては、上記の通り課徴金等含め約3,400億円相当の追徴課税が要求されているようですので、裁判所における係争は続くようです。

ボーダフォン(Vodafone)

英国に本社を置く携帯電話会社ボーダフォンは、インド子会社がモーリシャスの関連会社向けに発行した株式の価格が低すぎるという事で、約200億円相当の追徴税額支払を命じられました。税務当局が行った算定手法は、ボーダフォン・インド子会社の株価が時価と比べて不当に安く評価されているとして本来の時価発行額との差額を算出、同差額に関してはインド子会社から関連会社に対し貸出が行われているとみなし、その分のみなし金利所得を算定した模様です。

ボーダフォンは、資本取引は移転価格課税の対象外である等、同更正を不服として裁判所に提訴しましたが、ムンバイ高等裁判所は2013年11月29日付で、本件は裁判所に持ち込まれる前に、最初に係争解決パネル(“DRP”、2009年に新設されたインド国内の仲裁制度)で解決を図らなければならないと命令を下しました。但し、ボーダフォンは既にDRPにおける手続きも同時に進めているようです。

またボーダフォン社の場合、他に2件の巨額の税務係争案件を抱えています。1件は、インドでのM&Aに絡んでUS$22億(約2,200億円)のキャピタルゲイン課税を命じられた件(詳細は2012年4月号をご参照)、もう1件はインド子会社が海外関連会社に提供したコールセンター・サービスに関する約1,400億円相当の更正課税で、これも2013年9月にムンバイ高等裁判所により、国税不服裁判所で最初に争うよう差し戻されました。

IBM

米国IBM社は2013年12月、インドの税務当局から受けた更正課税に関して、DRPに仲裁を申請したことを明らかにしました。課税の詳細は不明ですが、インド子会社の2009年3月期の所得がUSD18億(約1,800億円)相当過少計上されていると認定されたようです。課徴金を含めた追徴税額はUSD8億(約800億円)相当に上ると推定されています。

但し、以前も本稿(2010年11月号)で指摘の通り、DRPにおけるパネリスト3名はいずれもインド国内の所得税務局長が務めており、公正な解決を図る手段としては問題があると言われています。おそらく、DRPでは終わらず、裁判所に持ち込まれる可能性が高いのではないでしょうか。


これだけ巨額の課税が、しかも合理的でないと思われる手法で行われると、その税務リスクの高さから、多国籍企業のインド向け投資に悪影響が出ることが予想されます。進出した日系企業も、既に多くは課税されている可能性がありますが、ボーダフォンのように複数の課税案件を抱える事もあり得ますので、十分な注意と対策が必要と思います。但し上記に紹介した欧米の超大企業も当然事前の対策は行っていたはずであることを考えると、事前準備が保険にならない事もインドのような国ではあり得ることを示しており、その意味では困ったものです。

(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)

(JAS月報2014年1月号掲載記事より転載)

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