新着情報(2024年11月15日):国税庁が令和5事務年度の「相互協議の状況」を発表
国税庁は2024年(令和6年)11月7日、令和5事務年度(令和5年7月1日から令和6年6月30日まで)の「相互協議の状況」を発表しました。それによると、相互協議事案の発生件数は、新型コロナウィルス感染拡大(コロナ禍)の社会的制限が緩和された流れを受け、令和3、令和4両事務年度連続で過去最多を更新しましたが、令和5事務年度は、前事務年度の301件から-89件(30%)と大幅に減少し、212件となりました。但し過去の推移をみると、200件を上回り引続き高水準にあると言えます。
一方処理件数については、前事務年度の191件から28件(15%)増加の219件と大幅に増加し、前事務年度に引続き過去最多を更新しました。当該事務年度については処理件数が発生件数を上回ったことにより、繰越案件の件数は前事務年度の742件から7件減の735件となりました。
相互協議事案のうち大部分を占める事前確認(以下“APA”)に係る事案については、発生件数は前事務年度の243件から76件(31%)減少し167件となった一方、処理件数は前事務年度の146件から12件(8%)増加し158件と過去最多を更新しました。
(1)繰越事案の地域別内訳
令和5事務年度末の繰越事案の数を国別に見ると、米国(24%)、中国(14%)、インド(14%)、韓国(8%)、ドイツ(5%)の順となっており、順位としては前事務年度と比べるとインドと中国が入れ替わりました。地域別では、アジア・大洋州が390件(前事務年度比-17件)と減少し、米州が204件(同+11件)と増加した一方、欧州(南アフリカを含む)は141件(同-1件)と横ばいでした。繰越事案全体としては、未だにアジア・大洋州事案が過半数(53%)を占めています。
相互協議事案全体に占めるAPAの割合をみると、米州では97%と非常に高いのに対し、アジア・太洋州、欧州ではそれぞれ75%、76%となっており、米州以外では移転価格をはじめとする課税事案が比較的多いことがうかがえます。
(2)処理事案1件当たりに要した平均期間
令和5事務年度の処理事案1件当たりに要した平均期間は、前年度の30.2か月から31.8か月へと若干増加しました。その内訳をみると、APA事案の1件当たりの平均処理期間は前年度の30.5か月から35.8か月へと増加したのに対し、課税事案の1件当たり平均処理期間は前年度の29.2か月から21.5か月へと大幅に減少しました。
ちなみに、中国、インドなど相互協議の交渉が難しいとされる国が多いOECD非加盟国・地域との相互協議に係る1件当たり平均処理期間は42.2か月(前事務年度は51.3か月)と大幅に短縮されました。
(3)処理事案の業種別内訳(カッコ内は前年度)
製造業 約69%(約65%)、卸売・小売業 約19%(約23%)、その他 約12%(約12%)
(4)処理事案の対象取引別内訳(全体比)(カッコ内は前年度)
棚卸資産取引 約40%(約45%)、役務提供取引 約32%(約34%)、無形資産取引 約28%(約21%)
(5)処理事案の移転価格算定方法別内訳(カッコ内は前年度)
取引単位営業利益法 約47%(約50%)、独立価格比準法約8%(約4%)、利益分割法 約4%(約10%)、原価基準法 約3%(約4%)、その他 約38%(約32%)