2020年5月:各国の対COVID-19税務支援策(2)
新型コロナウィルス(以下“COVID-19”)の影響で世界経済が日を追うごとに悪化していることを受け、各国は次々と経済支援策を打ち出しています。税務上の支援策も、日本では未だに確定申告期限の1ヵ月猶予(既に終了)と、納税期限の猶予(減免ではなく、しかも申請が必要)のみと、減税は行わないという姿勢が際立っていますが、世界各国では続々と発表されています。先月号に続き、主要国が発表した税務支援策を紹介します。
(中国)
(先月紹介した支援策に加え)医療保険料の企業負担分が2月~6月まで5ヵ月分半減されます。また、衛生陶器等1,420種の製品輸出における増値税還付率が引上げられました(3月20日より実施)。
(韓国)
韓国の企画財政部は4月8日付で、(先月紹介した零細自営業者に対する付加価値税減免の他)賃料を下げた不動産賃貸業者に対する税額控除、海外進出企業が国外の生産量を半分以上減らしてその分国内回帰(国内の事業所を増設)する場合の税減免などを含む税法改正の大統領令を4月14日付で公布しました。
(香港)
(先月に紹介した支援策に加え)香港税務当局は4月9日、今年第2四半期における個人所得税及び法人税の支払を3ヵ月延長する(分割支払を行っている場合等を除く)と発表しました。
(シンガポール)
シンガポール財務省は3月26日、COVID-19対策として2月に続く2回目の経済パッケージを発表、その中でホテル、会議場、レストラン等大きく影響を受けた物件は、今年の財産税支払が(先月紹介の30%還付から更に進んで)免除となり、その他オフィス等の商業物件の財産税も30%還付となりました。
また、今年4~6月に期限が到来する法人税の支払が自動的に3カ月間延長されます。
(ベトナム)
ベトナム財務省は4月10日、対COVID-19経済支援案を発表しました。その内税務支援策としては、20%の法人税を企業規模に応じて15~17%へと引下げ、小規模企業については法人税を2年間免税、個人所得税における家族控除額の引き上げ等が含まれています。
(ドイツ)
財務省が4月4日に発表した税務支援策には、企業が従業員に支給するボーナスのうち1,500ユーロ(18万円弱)までは社会保険料・税金の賦課を免除すること、及び今年の納税予定額が昨年より減ると予想される場合は前払い納税額の削減を可能とすることなどが含まれています。
(英国)
COVID-19の流行中は個人、企業に対する税務調査等通常のコンプライアンス業務を全て一時中断し、対COVID-19税務支援策の策定に優先して取り組んでいます。
(米国)
3月27日にトランプ大統領が署名した巨額のコロナウィルス救済法の中で、2018~2020年に発生した企業の税務上の損失(Net Operating Losses、“NOL”)を最大5年間繰り戻して法人税の還付を受けることを可能としました(米国では2018年以降NOLの繰り戻しは出来ませんでした)。また、4月17日にIRSが発表した規定では、このNOL繰り戻しにより、過去3年間のみ控除可能な外国税額控除が使えなくなった分は、3年より前に遡っての控除も可としました。
なお、本稿は4月20日時点までの情報ですが、各国の施策は今後も追加、修正等が予想されます。前掲の国々を含め、常に最新の情報を確認することをおすすめします。
(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)
(JAS月報2020年5月号掲載記事より転載)