2020年4月:各国の対COVID-19税務支援策(1)
新型コロナウィルス(以下“COVID-19”)が中国から瞬く間に世界中に拡がるにつれてヒトとモノの動きが止まり、世界経済が未曽有の状況に面しています。国際課税に関しても、デジタル課税を含む移転価格税制に関する国際的ガイダンス作成の進捗や税務当局の執行などの動きがみられなくなりました。
そこで今回は、これまでに発表されたアジアをはじめ主要各国の主な対COVID-19経済対策から、税務上の支援策(最終化していない草案等を含む)をとりあげて紹介します(3月20日時点)。
(中国)
- 影響が甚大な交通運輸・外食・宿泊・旅行観光業の4業種の企業が2020年度に発生した欠損金の繰越期間を5年から最大8年まで延長。
- 増値税小規模納税者である課税売上年500万元(約80百万円)以下の企業に対する増値税(3%)を減免(湖北省では免税、その他の省では1%)。
- 社会保険料(養老保険、失業保険、労災保険)企業負担分の減免: 湖北省では全企業に、それ以外では中小企業に対し2~6月の5か月分が免除。
(上記の国レベルの措置に加え、多くの地方政府でも支援措置を発表しています。)
(韓国)
政府が2月28日に発表した、総額16兆ウォン(約1兆5千億円)規模の対COVID-19景気対策案の中には、零細自営業者に対し付加価値税の減税を2021年末まで実施する事が含まれています。
(シンガポール)
2月18日付2020年度予算案において、シンガポールの全ての企業が今年の支払法人税の25%を(15,000 S$<約120万円>を限度として)還付されることになると発表しました。また、ホテルや会議場は今年の財産税支払額の30%還付を受ける他、観光・航空・小売・飲食・運送業に対する追加支援も行われます。
(香港)
COVID-19のみならず昨年は民主派のデモでも大きな経済的打撃を被っている香港政府は、2月26日発表の2020/2021年度予算案の中で、以下を含む各種の経済支援策を発表しました。
- 2019/2020年度の個人所得税および法人税を、いずれも2万HK$(約28万円)を上限として100%免除する。
- 2020/2021年度における、一般住宅用および商業用不動産保有税を(一定限度額以下は)免除。
- (税務対策ではないが)18歳以上の香港永住者に1人当り1万HK$(約14万円)を支給する。
(インドネシア)
インドネシア財務省は3月13日、以下のCOVID-19税務支援策を発表しました。
1)年間所得が2億ルピア(約140万円)以下の製造会社の従業員に対する個人所得税の一時的免除。
2)製造会社の法人税率を30%引下げ
(これらの措置は4月1日から9月30日まで適用される。)
(米国)
全ての個人、法人の連邦所得税(法人税)の申告及び税金支払を3ヵ月延長(4/15→7/15)します。
(英国)
イングランドの小売・観光・娯楽業の全事業者に対し、事業用固定資産税(ビジネスレート)を12カ月間全額免除します。
一方、今回のコロナ騒動では日本政府の動きの遅さが世界と比較して目につきますが、税務支援策としても、今の所決まったのは個人所得税の申告を1ヵ月延長した位です。税務対策のみが経済対策でないにしても、上記の他国と比べて明らかに見劣りする状況を鑑みれば、残念でなりません。
(執筆:株式会社コスモス国際マネジメント 代表取締役 三村 琢磨)
(JAS月報2020年4月号掲載記事より転載)